2024年05月
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世界初、本質的に伸縮可能な量子ドット発光ダイオードを開発 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は4月15日、ナノ粒子研究センター(Center for Nanoparticle Research)のキム・デヒョン(Kim Dae-Hyeong)教授率いる韓国の科学者チームが、本質的に伸縮可能な量子ドット発光ダイオード(QLED)を世界で初めて開発し、フレキシブルディスプレイへの新たなアプローチを開いたと発表した。この研究成果は、Nature Electronicsに掲載された。

現在市販されているフレキシブルディスプレイの大半は、有機発光ダイオード(OLED)技術を採用しているが、OLEDには輝度の制限や色純度の問題といった欠点がある。一方、QLEDディスプレイは色の再現性、輝度、寿命の点で優れているが、量子ドット(QD)自体には伸縮性がない。伸縮性のある材料に埋め込むアプローチでは、QDに効率的に電子と正孔を注入することが難しく、デバイスの電子発光効率が減少するという課題があった。

こうした限界を克服するため、研究チームは複合材料にp型半導体ポリマーであるTFBを組み込んだ。これにより、デバイスの伸縮性と正孔注入効率の両方が向上したほか、電子注入と正孔注入のバランスも改善された。

これらの材料を慎重に選択して設計した結果、低閾値電圧(3.2V)に加え、伸縮可能なLEDとして最高となる高輝度(15,170 cd m-2)のQLEDが実現した。このデバイスは、材料を引き伸ばすために大きな力を加えても損傷せず、最大1.5倍に伸ばしてもデバイス内部の量子ドット間の距離に変化はなかった。

研究チームはまた、伸縮可能な量子ドット発光層に適用できる高解像度のパターニング技術も開発した。共同筆頭著者のキム・ドンチャン(Kim Dong-chan)教授は、「発光材料とパターニング技術を組み合わせることで、我々のデバイスがRGB LEDや、パッシブマトリックスアレイなどの複雑な用途にも適用できる可能性が示された」と述べた。

Figure 1. Intrinsically stretchable quantum dot light-emitting diodes

Figure 2. QD-based stretchable emission layer for intrinsically stretchable quantum dot light-emitting diodes

Figure 3. Demonstrations of intrinsically stretchable quantum dot light-emitting diodes
(出典:いずれもIBS)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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