浦項工科大学校(POSTECH)は8月8日、同校とサムスン電子総合技術院(SAIT)の研究者が、半導体製造の廃水から希少金属のタングステンを回収するための、環境に優しくコスト効果の高い方法を明らかにしたと発表した。この研究に関する論文は学術誌ACS Sustainable Chemistry & Engineeringに掲載され、表紙(supplementary cover)に選ばれた。
タングステンは電子機器や半導体、航空機、自動車などの産業で幅広く使用されているが、希少であり、採掘できる国は限られている。工業廃水からこのような金属を回収することは、資源回収と環境保護の両面で有用になると期待される。
今回の研究では、半導体製造の廃水からバイオリーチングを用いてタングステンを回収し、この技術の経済的実行可能性を評価した。バイオリーチングは微生物を利用して金属を溶出させる手法であり、従来の化学的プロセスと比較して、環境への影響が小さく、少ないエネルギーとコストで金属を抽出できる。
チームは真菌Penicillium simplicissimumを用いてタングステンやその他の金属を溶出したあと、活性炭を用いた吸脱着(activated carbon-based adsorption-desorption)とパラタングステン酸アンモニウム(APT)沈殿(ammonium paratungstate precipitation)の2種類の精製プロセスを用いて、溶液中からタングステンを回収した。
経済分析により、活性炭を用いた吸脱着プロセスが、APT沈殿プロセスよりも7%安価であることがわかった。さらに、プロセスの効率を高めるには、反応時間の短縮と、微生物株の適応と増殖の改善が重要であることも明らかになった。
研究チームの一員であるSAITのチャン・スンチョン(Chung Soonchun)博士は「高効率な微生物株の開発により、このプロセスの経済的実行可能性を高めることを目指す」と語った。
(出典:いずれもPOSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部