韓国の基礎科学研究院(IBS)は8月8日、同院の研究チームが、ナノクラスター合成中の攪拌条件を制御して酸素摂取量を調整することで、非常に安定性の高い蛍光銀ナノクラスターを生成することに成功したと発表した。この研究成果は、学術誌nano micro smallに掲載された。
IBS内のアルゴリズム・ロボット合成センター(Center for Algorithmic and Robotized Synthesis)のバルトス・A・グリボウスキー(Bartosz A. Grzybowski)所長が率いるチームは、水素化ホウ素ナトリウム/グルタチオン系での蛍光銀ナノクラスターの合成において、攪拌条件を制御するだけで、不安定で非蛍光性の構造体から蛍光性の高い構造まで、得られる構造体の特性を正確に調整できることを突き止めた。たとえば、攪拌速度は同じでも、攪拌棒のサイズを25×12ミリから20×10ミリへとごくわずかに変えるだけで、系統的に無蛍光の生成物が得られた。
さらに、酸素が銀ナノクラスターの構造と機能的特性を決定する要因であることも判明した。正確な攪拌条件を用いて大量の酸素を供給することで、並外れた安定性を誇る蛍光銀ナノクラスターが生成され、2年以上も蛍光性を保つことに成功した。
この銀ナノクラスターの優れた安定性は、触媒やバイオセンシング、バイオイメージングなど、幅広い用途の道を開く可能性がある。
図1. 銀硝酸、グルタチオン、ホウ化ナトリウムの混合物を酸素が十分に含まれていない環境で攪拌すると、生成物はポリ分散で蛍光を発しない粒子の混合物になる(左図)十分な酸素が供給されると、反応混合物は安定して強い蛍光を発する銀ナノクラスターを生成する
(出典:IBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部