韓国の漢陽大学校(Hanyang University)有機ナノ工学科(Department of Organic and Nano Engineering)のハン・テヒ(Han Tae-hee)教授が率いる研究チームは7月10日、現代自動車(Hyundai Motor Company)および起亜株式会社(Kia Corporation)と共同で、自動車の暖房装置に使用できる高効率な加熱繊維(heating fiber)「MXene」を開発したことを発表した。この研究の成果は2024年5月に学術誌Small Methodsに掲載された。8月21日付け。
EVでは、冬季に暖房の電気エネルギー消費によって航続距離が減少することは避けられない問題である。シートなど乗員の身体に直接接触する部分を温める装置の材料としては従来銅が使用されているが、銅はエネルギー消費量の多さや重さによりEVの効率低下を招くことが難点となっている。
ハン教授らは、電気伝導率が高く熱伝導率が低い材料MXeneと、炭素繊維の前駆体として用いられるポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)を組み合わせ、安定化させることにより、高効率な加熱繊維を作ることに成功した。この繊維は従来のアプローチと比較して、暖房に必要なエネルギーを400%削減できることが示された。銅の代わりにEVに使用した場合、車両の軽量化と熱源の電気エネルギー消費の削減により、航続距離を延ばせる可能性がある。また、EVのエネルギー効率を高め、バッテリーの動作時間を延ばすことにより、カーボンニュートラル目標の達成にもつながると期待される。
この繊維は、湿度99.9%、温度80℃の環境でも安定した加熱性能を示し、その機械的安定性と環境安定性の高さから、自動車だけでなく、ウェアラブルデバイスなどの幅広い用途に利用できると見込まれている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部