韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は9月19日、機械工学科のキム・ドンスン(Kim Dong Sung)教授らの研究チームが生体組織におけるシワの構造を試験管内(in vitro)で再現することに成功し、シワの形成メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究成果は、国際学術誌Nature Communicationsに掲載された。
シワは、皮膚の老化現象と関連付けられることが多いが、脳、胃、腸など多くの臓器や組織におけるシワの構造は、細胞の状態や分化を制御する上で重要な役割を果たしている。しかし、試験管内でのシワ形成の再現には限界があり、この分野の研究の多くは動物モデルに依存してきた。その結果、生体組織におけるシワ形成の詳細なプロセスは、ほとんど解明されていない。
この限界に対処するため、キム教授の研究チームは、ヒト上皮細胞と細胞外基質(ECM)のみからなる上皮組織モデルを開発した。このモデルと正確な圧縮力を加えることができる装置を組み合わせることで、腸や皮膚などの生体組織に典型的に見られるシワ構造を試験管内で再現し、観察することが可能となった。この方法により、研究チームは、強い圧縮力による1本の深いしわの階層的変形と、軽い圧縮力による多数の小さなシワの形成の両方を再現することに初めて成功した。
(出典:POSTECH)
また、下層のECMの多孔質構造や脱水、上皮層に加わる圧縮力などの要因が、シワの形成過程に極めて重要であることも判明した。これらの観察結果は、下層の組織層の脱水がシワの発生につながるという、老化した皮膚に見られる作用を反映しており、シワ形成のメカノバイオロジカルなモデルが得られた。
キム教授は、研究の意義について「我々が開発したプラットフォームは、動物実験を行わずに生体組織でさまざまなシワ構造を再現でき、発生学、生体医工学、化粧品などの分野で幅広く応用できる」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部