2024年11月
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創薬のパラダイムチェンジ、世界初の原子編集技術を開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は10月8日、同院の研究チームが、フラン化合物の酸素原子を簡単に編集して窒素原子に転換し、医薬品に広く使用されるピロール骨格に直接変換する技術の開発に成功したと発表した。この研究成果は、科学誌Scienceに掲載され、同誌のPerspectiveで取り上げられた。

本研究の概念的イメージ
(出典:KAIST)

医薬品の効能は、一つの重要な原子によって決定されることが多く、酸素や窒素などの原子は、特にウイルスに対する薬理効果を高める上で中心的な役割を果たしている。薬物分子に特定の原子を導入することで、効能が劇的に変化するこの現象は「単一原子効果(single atom effect)」として知られている。しかし、酸素や窒素を含む安定した環構造内の単一原子を選択的に編集することは困難であったため、単一原子効果を評価するには従来、いくつもの段階からなる高価な合成プロセスが必要であった。

この課題を克服するため、化学科のパク・ヨンス(Park Yoonsu)教授率いるチームは、光エネルギーを利用する光触媒を開発した。この光触媒は、「分子はさみ」の役割を果たし、五員環を自由に切断あるいは接着することで、世界で初めて室温・大気圧での単一原子の編集を可能にした。

研究チームは、励起された分子はさみが一電子酸化によってフランから酸素を除去し、次に窒素原子を付加するという新しい反応メカニズムを発見した。

ヨンス教授は、「この画期的な技術は、創薬の重要な課題である医薬品候補化合物のライブラリー構築に新たな扉を開くだろう」と述べ、医薬品開発プロセスに革命をもたらすとの期待を示した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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