韓国エネルギー技術研究院(KIER)は11月21日、クリーンエア研究所(Clean Air Research Laboratory)のチェ・ヨンチャン(Choi Young-chan)博士率いる研究チームが、カシューナッツの加工時に廃棄される殻から高品質のバイオ燃料を製造する技術を開発したと発表した。
バイオマスを原料とするバイオ燃料は環境に優しいエネルギー源として注目されている。しかし韓国では、単一のバイオマスだけで必要な原料を確保することが難しく、さまざまなバイオマスを収集するコストがかかるため、化石燃料に比べ経済性が劣ることが課題になっている。そこで研究チームは、海外で容易に入手でき、高カロリーの油成分を40%含むカシューナッツの殻に着目した。
カシューナッツの殻からバイオ燃料を製造する機械圧搾法は、ベトナムなどの東南アジア諸国で実用化されているが、生産収率が原料の20%にとどまり、生産される油の品質も高くない。また、工業用ボイラーや発電所、船舶燃料に適したバイオ重油に転換するには、硫酸やアルコールなどの触媒を使用する化学プロセスが必要であり、環境汚染につながる可能性がある。
従来の機械的圧搾法の限界に対処するため、研究チームは、中温熱分解法によって効率的に高品質のバイオ重油を製造する技術を開発した。この技術により、生産時間は従来の3分の1に短縮され、生産収率は40%と2倍以上に向上した。また、完全自動化が可能となるため、運転コストも半減できる。
生産されたバイオ重油の硫黄含有量は90ppmで、国際海事機関(IMO)の定める硫黄酸化物排出基準を満たし、船舶燃料としての可能性を証明した。さらに、副産物のバイオ炭は炭素含有量が高く、発電所や製鉄所で石炭に代わる燃料として使用できる。
チェ博士は、「我々が開発したバイオ燃料製造プロセスは、シンプルな製造工程で大量生産を可能にするため、東南アジアでの商業化の実現性が高い」と述べ、2025年にパイロットスケールの設備研究を開始し、本格的な商業化に進む計画を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部