2025年01月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2025年01月

ウェアラブルデバイスのデータだけで気分エピソードを予測 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は、同院の研究者らのチームが、ウェアラブルデバイスから収集した睡眠と概日リズムのデータのみを用いて、気分障害患者の気分エピソードを予測できる新たなモデルを開発したと発表した。この研究成果は、医学誌npj Digital Medicineのオンライン版に掲載された。

気分障害は、睡眠と概日リズムの不規則性と密接に関連している。気分エピソードの予測には、睡眠・覚醒パターンの分析が重要だが、既存のモデルは多様な種類のデータを必要とするため、データ収集にコストがかかり、実用化には限界がある。

こうした限界を克服するため、IBS生物医学数学グループ(Biomedical Mathematics Group)のキム・ジェキョン(Kim Jae Kyoung)主任研究員と高麗大学校医学部のイ・ヒョンジョン(Lee Heon-Jeong)教授率いる研究チームは、睡眠・覚醒パターンデータのみを用いて気分エピソードを予測するモデルを開発した。168人の気分障害患者の429日分のデータを分析することで、研究チームは睡眠と概日リズムの36の特徴を抽出した。これらの特徴を機械学習アルゴリズムに適用したところ、抑うつ、躁、軽躁エピソードを高精度に予測することに成功した。

この研究では、概日リズムの日々の変化が気分エピソードの重要な予測因子であることが判明した。具体的には、概日リズムが遅れると抑うつエピソードのリスクが高まり、概日リズムが進むと躁病エピソードのリスクが高まる。

キム主任研究員は、「睡眠・覚醒パターンデータのみに基づいて気分エピソードを予測するモデルの開発により、データ収集のコスト削減と、臨床への応用可能性の大幅な向上が実現した」と述べ、今回の研究が気分障害の費用対効果の高い診断と治療のための新たな可能性を開くとの期待を示した。

図1. 睡眠・覚醒データのみを用いた気分エピソード予測モデル開発
IBS、KAIST、高麗大の共同研究チームは、既存の気分エピソード予測モデルの限界を克服する新しい予測モデルを開発。これまでのモデルは様々な種類のデータを必要としていたが、新しいモデルは睡眠・覚醒時のウェアラブルデータのみに依存している。

図2. 睡眠・覚醒データを用いた気分障害患者の気分エピソードの予測結果
睡眠・覚醒ウェアラブルデータを用いた気分障害患者の気分エピソードの予測結果。このモデルは、抑うつ(左)、躁(中央)、軽躁(右)エピソードをそれぞれ0.80、0.98、0.95のAUCで予測した。

図3. 概日リズムの遅れと進みは、それぞれ抑うつエピソードと躁エピソードに関連
(左) 概日リズムが遅れると抑うつ(赤い点)の可能性が高くなる。
(右) 躁(青い点)の可能性は概日リズムが進むにつれて高くなる。
(出典:いずれもIBS)

(2024年11月19日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る