韓国・漢陽大学校(Hanyang University)材料化学工学科(School of Materials Science and Engineering)のキム・ヒョンジン(Kim Hyung-jin)教授が率いる研究チームは、従来のコンピューティングシステムの演算効率向上につながる、次世代半導体を用いた人工知能(AI)コンピューティング技術を開発したことを発表した。
メモリ半導体に演算能力を内蔵する次世代のAI半導体技術は、演算効率を向上させ、AIアルゴリズムの並列処理に対応する。しかし、既存のソフトウェアアルゴリズムをハードウェア基盤で実行することにはいくつかの限界がある。また、現在量産されているNAND型フラッシュメモリでは直列に接続されたトランジスタを使用しているため、並列演算の実行が困難である。
キム教授らはこの問題を解決するため、次世代メモリデバイスであるメモリスタ(memristor)の状態を制御することで、ソフトウェアベースのAI技術である擬似焼きなまし法(simulated annealing)を実行した。この手法は、電流ノイズの特性を利用して、ニューラルネットワークが局所的な最小エネルギー状態を抜け出し最適解を探索できるよう促す。また、既存のNAND型フラッシュメモリの構造でトランジスタの代わりにキャパシタを用いることで、並列演算を実行できるようにした。このアプローチは、現在量産されている3D NAND型フラッシュメモリと構造的に互換性があるため、迅速に商用化できる利点がある。
キム教授らのチームは、半導体技術の権威ある国際学会International Electron Devices Meeting(IEDM)でこの研究成果を発表した。
(2024年12月11日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部