韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は1月21日、ユン・グンスS(Yun Gunsu S.)教授とジン・ヒョンギュ(Jin Hyungyu)教授らが率いる学際的チームが、クリーン水素製造における主な制約にマイクロ波を利用して対処する画期的な技術を開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Journal of Materials Chemistry Aのインサイドフロントカバーに採用された。
金属酸化物の酸化還元を利用する従来の熱化学法による水素製造は、最高1500℃という極めて高い温度を必要とする。この方法は、大量のエネルギーを消費し、コストがかさむだけでなく、スケールアップが難しいため、実用化が制約される。
こうした課題に対処するため、POSTECHの研究チームは、家庭用電子レンジに使われているマイクロ波エネルギーに着目した。マイクロ波は、一般に食品の加熱に使われるイメージだが、化学反応を効率的に促進する作用も持つ。研究者らは、マイクロ波エネルギーによって、水素製造のベンチマーク材料であるGdドープセリア(CeO2)の還元温度を従来の1500℃から600℃以下まで、約60%下げることに成功した。また、マイクロ波エネルギーは、反応に必要な熱エネルギーの75%を代替できることが判明した。
さらに、水を水素に分解するのに必要な「酸素空孔」の形成プロセスも、従来の技術では超高温と数時間を要したが、マイクロ波技術を活用することにより、600℃以下の数分の処理で同じ結果を達成することができた。このプロセスは、熱力学モデルによってさらに検証され、マイクロ波による反応のメカニズムが解明された。
(出典:いずれもPOSTECH)
ジン教授は、「この研究は、熱化学水素製造技術の商業的実現可能性に大きな変革をもたらす可能性があります」と述べ、マイクロ波を利用した化学プロセスに最適化された新材料の開発にも期待を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部