2025年03月
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安全かつ効率的なポリマーベースのmRNA送達システムを開発 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は2月5日、化学科(Department of Chemistry)のキム・ウォンジョン(Kim Won Jong)教授率いる研究チームと韓国疾病管理庁(KDCA)が共同で、mRNAを効率的に輸送する生分解性ポリマーベースの送達システムを開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Biomaterialsに掲載された。

COVID-19のパンデミック以来、mRNAワクチンに対する関心が世界的に高まっている。既存の送達方法では、脂質ナノ粒子(LNP)が広く用いられているが、体内注入後に肝臓に蓄積し、毒性や過剰な免疫反応を引き起こす可能性があることが課題となっている。

この課題に対処するため、研究チームは、LNPの代替として生分解性ポリマーであるポリβ-アミノエステル(PBAE)を検討した。PBAEは、既にsiRNA、DNA、mRNAの送達に利用されており、体内で安全に分解される。今回の研究では、研究チームは55種類のPBAEポリマーを合成し、それらを用いてmRNA送達用の新たなポリマーナノ粒子(PNP)を設計した。

実験の結果、新たに開発されたポリマーは、従来のLNPよりも高いmRNA送達効率を示した。その上、mRNAの発現期間は最長4週間持続し、LNPによる一般的な発現期間である5日を大幅に上回った。特筆すべきは、このポリマーが注入部位でのみmRNA発現を確保したことである。肝臓での発現は検出されなかったため、毒性の懸念が解消された。さらに、免疫応答実験では、T細胞活性を効果的に誘導し、COVID-19ウイルスに対する中和抗体の生成においてLNPと同等の性能を示すことが確認された。

キム教授は、「既存のLNPベースの送達システムは発現期間が短く、治療応用に制約があった。我々のチームが開発したポリマー送達システムは、mRNAの発現を最長1カ月まで延長できるため、治療用mRNAの送達に適している」と述べた。

(出典:POSTECH)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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