韓国の基礎科学研究院(IBS)は2月6日、IBS気候物理学センター(IBS Center for Climate Physics: ICCP)の研究チームが、最新の気候モデルを用いて、小惑星の衝突が地球上の気候や生命にどう影響するかを解明したと発表した。この研究成果は、学術誌Science Advancesに掲載された。
生成AI「Adobe Firefly」で作成されたイメージ図
太陽系には、地球近傍軌道を持つ天体が数多く存在し、中には衝突の可能性が無視できないものもある。最近の研究によれば、直径約500メートルの小惑星ベンヌが2182年9月に地球と衝突する確率は約2700分の1と推定されている。
研究チームは、ベンヌ級の小惑星が衝突した場合、地球の気候システムや、陸上植物、海洋プランクトンにどのような影響が及ぶかをシミュレーションした。衝突時に1億~4億トンの粉塵が上層大気に放出されたと想定し、IBSのスーパーコンピューター「Aleph」を用いて複数のシナリオを解析した結果、衝突後3~4年の間に、気候、大気化学、地球の光合成に劇的な混乱が生じることが明らかになった。4億トンが放出される最悪のシナリオでは、粉塵によって太陽光が遮断されることで地球の地表温度が最大4℃低下し、地球全体の平均降水量は15%減少するほか、オゾンが約32%も減少する。地域によっては、こうした影響がさらに強く出る可能性もある。
「これは、世界の食料安全保障に大きな混乱を引き起こす可能性が高い」と、ICCPのポストドクトラルリサーチフェローで、この研究の主執筆者であるダイ・ラン(Dai Lan)博士は指摘した。
図1. ベンヌ級の小惑星衝突による4億トンの粉塵放出による気候と生態系の反応。表面温度の空間的変化(左上)、全降水量(右上)、衝突後最初の24ヶ月間の陸地純一次生産量の変化率(左下)、および制御シミュレーションに対する衝突後10から38ヶ月間の海洋純一次生産量の変化率(右下)の平均値
(出典:IBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部