2025年03月
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山火事とその要因の複雑な相互作用を解明 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は2月13日、IBS気候物理学センター(IBS Center for Climate Physics: ICCP)の研究チームが、スーパーコンピューターを利用した現実的なシミュレーションを通じて、山火事、植生、煙、大気の間の複雑な相互作用を解明したと発表した。この研究成果は、学術誌Science Advancesに掲載された。

生成AI「Adobe Firefly」で作成されたイメージ図

近年の極端な山火事シーズンを受け、山火事を気候変動という広範な文脈の中でより深く理解することが喫緊の課題となっている。しかし、これまでの気候シミュレーションでは、気候変動、雷、山火事、煙、付随する日射量と熱量の変化との間の相互作用が捉えられていなかった。

今回、研究チームは、火災、植生、煙、大気間の複雑な相互作用を考慮に入れたシミュレーションを実施した。その結果、地球温暖化が1℃進むごとに世界的な雷の発生頻度が約1.6%増加する可能性が高いことが判明した一方、火災による焼失面積が年々増加している主な要因は、世界的な湿度の変化と、山火事の燃料となりうる植生の成長スピードの上昇であることが示された。

研究ではまた、地球温暖化による火災の激化が最も顕著になる地域として、赤道アフリカ南部・中部、マダガスカル、オーストラリア、地中海沿岸の一部、北アメリカ西部を特定した。さらに、世界的に火災が増えるほど、火災による煙の影響も増大することが示された。山火事から生じる煙は、大気汚染に影響するほか、太陽光の浸透の減少につながる。

本研究の主執筆者である元ICCPポスドクリサーチフェローのヴィンセント・ヴェルヤンス(Vincent Verjans)博士(現在はバルセロナ・スーパーコンピューティング・センター在籍)は、「我々の結果は、地球が1℃温暖化するごとに、世界全体の平均焼失面積が14%増加することを示しています。これは、生態系、インフラ、人間の健康と生計に大きな影響を与える可能性があります」と述べた。

図1.地球温暖化1℃あたりの雷、火災、および煙の世界的な変化
(A)モデル化された雷の発生率密度の変化
(B)年間の焼失地の割合
(C)火災によるエアロゾル光学的深度の変化で大気中の煙の量の指標
モデルシミュレーションではCO2が工業化前の状態に比べて140年間で4倍に増加し、これは地球平均表面温暖化約4℃に相当する。
(出典:いずれもIBS)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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