韓国エネルギー技術研究院(KIER)は2月26日、同院のリュ・ホジュン(Ryu Ho-jung)博士の研究チームが、世界最大規模のケミカルルーピング燃焼(chemical looping combustion:CLC)プラントの実証を行い、高効率な二酸化炭素(CO2)分離と発電用蒸気の生成に成功したことを発表した。
CLCは、燃料を空気と直接接触させるのではなく、酸素キャリア粒子を介して供給する酸素により燃焼させる。このプロセスによりCO2と水蒸気が生成され、特別な装置を用いることなく容易にCO2を分離回収できる。さらに従来の火力発電と比較して窒素酸化物の排出量を大幅に減らすことができる。
KIERの研究チームは韓国電力公社研究所(KEPCO Research Institute)と共同で2023年に世界最大となる3メガワット規模のパイロットプラントを建設し、フルスケールの実証試験を実施した。300時間を超える連続運転を行い、CO2分離排出効率(separation and emission efficiency)で世界的ベンチマークの94%を上回る96%超を達成した。さらに世界で初めてCLC技術を用いた発電用蒸気の生成に成功し、この技術の商用化への可能性を開いた。
この技術は従来の手法と比較してCO2回収コストを30%削減できると見込まれており、今回の成果は、韓国の炭素中立(カーボンニュートラル)目標の達成に大きく貢献すると期待されている。
リュ博士は「炭素中立の達成には、CLCのような革新的技術を取り入れたガス発電所の確立と運用が不可欠となります。次世代の発電ソリューションの商用化を加速するため、引き続き技術の実証を進めます」と述べている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部