韓国の浦項工科大学(POSTECH)は3月25日、スピーカー機能を内蔵しながら自由な形状変化が可能な、世界初の超薄型有機EL(OLED)パネルを開発したと発表した。研究成果は学術誌npj Flexible Electronicsに掲載された。
ディスプレイ業界では折り曲げ可能、折りたたみ可能、ローラブル、伸縮可能などといったフレキシブル技術の開発が急速に進められている。現在のフレキシブルディスプレイは、ヒンジやモーターなどの機械構造に依存しており、厚みや重量の増加といった課題があった。
今回POSTECHが開発した新技術では、特殊な超薄型圧電ポリマーアクチュエーターをOLEDに導入することで、電気信号により凹カーブ、凸カーブ、波状など多様な形状に変形させることに成功した。ヒンジ等の機械的部品を使わないため、OLEDの薄さや柔軟性を損なうことなく、動的な形状制御を実現した。さらに、このアクチュエーターは高周波の電気信号に応答して振動を生み出すため、ディスプレイそのものがスピーカーとしても機能する。
研究を主導したチェ・スソク(Su Seok Choi)教授は「この技術は、OLEDの薄く、柔軟で、軽量といった特徴のすべてを維持したまま、自由な形状モーフィングと内蔵のサウンド出力を、1枚の超薄型OLEDパネルに組み込んだ初めての技術です」と説明する。研究チームは、実際のスマートフォンサイズのパネルで、変形と音響出力の両機能が可逆的かつ安定して動作することを実証している。
この技術は今後、モーフィング可能なスマートフォン、自動車の没入型ダッシュボード、ウェアラブル機器、ソフトロボットなど、次世代のインターフェース開発に応用が期待されている。本研究は韓国の産業通商資源部やLG Display社との共同プロジェクトで、韓国研究財団(NRF)の支援を受けて行われた。
(出典:POSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部