韓国の浦項工科大学(POSTECH)は4月10日、POSTECHと韓国の全北国立大学の共同研究チームが、長年理論上不可能と考えられていた、単一の共振器内への力学波の完全な閉じ込めに成功したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Lettersに掲載された。
スマートフォンや超音波装置、ラジオに至るまで、現代の多くの技術は、特定の周波数で波が増幅される共振現象を利用している。通常、共振器は時間とともに徐々にエネルギーを失い、機能を維持するためには常に外部からのエネルギー供給が必要である。
しかし、ノーベル賞受賞者であるユージン・ウィグナー(Eugene Wigner)とジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)は約1世紀前、特定の条件下で波が周囲にエネルギーを漏らすことなく無限に閉じ込められる可能性があるという概念を提唱した。この概念は連続スペクトル中の束縛状態(Bound States in the Continuum : BIC)と呼ばれ、単一粒子系では存在し得ないと考えられていた。
今回の研究では石英製の円柱を用いた単一粒子系のシステムを用い、円柱同士の接触条件を高度に制御することで波動のモードを1本の円柱内部に閉じ込めることに成功した。これによりBICの実現に実験的に成功し、長年の理論的障壁を打ち破った。
さらに、複数の円柱を連結して形成されたシステムでは、波が分散することなく構造全体に広がることも発見した。この現象はBound Band in the Continuum(BBIC)と呼ばれ、エネルギーハーベスティングや超高感度センサー、高度通信などの分野での応用が期待される。
研究を率いたロ・ジュンスク(Junsuk Rho)教授は「私たちの研究は長年の理論的限界を打ち破るものです。まだ基礎研究段階ですが、この成果は低損失エネルギーデバイスから次世代センシング・信号技術に至るまでさまざまな技術に影響を与える可能性があります」と語った。
(出典:POSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部