2025年06月
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パーキンソン病における炎症性RNA編集酵素の役割を明らかに 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は5月2日、同大学の研究者と国際的な共同研究チームがパーキンソン病(PD)の神経炎症に関与する新たな分子機構として、RNA編集酵素ADAR1の異常活性化が重要な役割を果たすことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Science Advancesに掲載された。

KAIST脳認知科学科のミニー・L・チョイ(Minee L. Choi)教授(上段左)と共同研究者ら

KAIST脳認知科学科のミニー・L・チョイ(Minee L. Choi)教授らは、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)および英国のフランシス・クリック研究所と共同で、アストロサイトとニューロンを共培養したPDモデルを用いて研究を実施した。アストロサイトは脳内の保護反応を担うグリア細胞の一種であり、神経保護に重要な役割を果たす。

研究では、PDの原因物質とされるα-シヌクレインタンパク質の異常凝集体(オリゴマー)を投与し、アストロサイトにおける炎症応答を解析した。その結果、アストロサイト内で危険センサーとして機能するToll様受容体経路と、免疫シグナル伝達を担うインターフェロン応答経路が活性化し、この過程でRNA編集酵素ADAR1が誘導され、タンパク質構造と機能が変化することが確認された。

さらに、ADAR1が通常の「A-to-I RNA編集」によってウイルス感染時に免疫反応を調節するのとは異なり、炎症関連遺伝子に異常な編集活性を示していることが判明した。この現象は患者由来の幹細胞モデルのみならず、実際のPD患者の死後脳組織でも観察された。

これにより、RNA編集の制御異常がアストロサイトの慢性炎症を引き起こし、神経毒性や病理進行を促すことが初めて実証された。同教授は「本研究は、タンパク質凝集に起因する炎症制御がRNA編集という新たな層で行われることを示しており、従来とは異なる治療戦略の道を開くものです」と述べた。また、「RNA編集技術は神経炎症に対する治療法の転換点となる可能性があります」とも強調した。

Figure 1. Schematic diagram of the inflammatory RNA editing model in Parkinson's disease

Figure 2. Experimental design and inflammatory response induction in astrocytes following treatment with α-synuclein oligomers (abnormally folded protein fragments

Figure 3. When treated with α-synuclein oligomers, the causative agent of Parkinson's disease, A-to-I RNA editing is induced to change genetic information by ADAR in patient-derived stem cell-differentiated glial cells, confirming that α-synuclein is likely to be associated with the progression of Parkinson's disease through RNA editing
(出典:いずれもKAIST)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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