2025年06月
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自閉症児と親の対話支援AIアプリ開発、意味のあるやり取りを共有 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は5月19日、最小限の言語能力しか持たない自閉症児(MVA)とその親の間に実りある対話を可能にするAI搭載コミュニケーションアプリ「AAcessTalk」を開発したと発表した。研究成果は米国計算機学会(ACM)が主催する国際会議CHI 2025のプロシーディングスに掲載された。

研究を主導したホン・ファジュン(Hwajung Hong)教授(左)と研究チームメンバーら

このプロジェクトは、KAIST工業デザイン学科がNAVER AIラボおよびDodakim児童発達センターと共同で進めたものである。固定されたカードを使う従来の補完・代替コミュニケーション(AAC)ツールとは異なり、「AAcessTalk」は子どもの興味や状況に応じて、AIがリアルタイムで語彙カードを推薦する。

AAcessTalkシステムの概略図。自閉症の子ども向けにパーソナライズされた単語カードと、親が実践的なコミュニケーションに集中できるように文脈に基づいた会話ガイドを提供。子どもが会話をリードできるように、子どもの側に大きな「ターンパスボタン」を配置
(出典:いずれもKAIST)

アプリは、子どもが会話の開始や終了を操作できる「ターンパスボタン」や、親の考えを尋ねる「ママ/パパはどう?」ボタンなどを備えており、対話の双方向性を重視した設計がなされている。親と子が互いの気持ちや関心をより深く理解し合うことを目的としている。

2週間のパイロット研究には11家族が参加し、共通して「初めて意味のあるやり取りを共有できました」という体験談が語られた。子どもたちが主体的に会話の主導権を握り、これまで見られなかった言葉を使う場面もあり、親たちからは驚きと喜びの声が上がった。

本研究を主導したホン・ファジュン(Hwajung Hong)教授は、「この研究は、AIが単なる支援技術を超えて、家族の中に新たなつながりを築く架け橋となることを示しています」と述べた。

今後は神経多様性を尊重する人間中心のAI技術として、さらに改良・普及を目指す方針である。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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