2025年06月
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韓国における高齢者向け雇用創出の課題を報告 スタンフォード大学APARC

米国のスタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)は5月19日、韓国における「高齢者に優しい」雇用創出が米国に比べて遅れており、労働市場の構造的要因が就業機会に影響を及ぼしていると発表した。研究成果は学術誌Journal of the Economics of Ageingに掲載された。

本研究は、APARCのアジア保健政策プログラム・ディレクターで健康経済学者のカレン・エグルストン(Karen Eggleston)氏、韓国のソウル国立大学のキム・ヒョンスク(Hyeongsuk Kim)氏とイ・チョルヒ(Chulhee Lee)氏によって共同で執筆された。

韓国では2000年から2023年にかけて50歳以上の労働者が165%増加し、「超高齢社会」となっている。研究者らは、年齢に応じた働きやすさを数値化した「年齢フレンドリー度指数(AFI)」を用いて、韓国の高齢労働者の職務条件を若年層や米国の同年代と比較分析した。

その結果、韓国においても高齢者向けの柔軟な勤務体系や身体的負担の少ない職種が増加しているが、米国に比べて伸びは緩やかであり、高齢労働者が必ずしも主な受益者ではないことが明らかになった。特に、女性や大学卒業者が恩恵を多く受ける一方、非大卒の男性はその範囲外に置かれている傾向が強い。また、65歳以上の就業率が高い韓国においても、62歳以上の労働者の約3分の1が重労働に従事し、賃金も低水準であることが判明した。「主に座っている」職種に就く割合は全体の2割強に過ぎなかった。

背景には、低水準の年金制度や非正規雇用の多さ、企業の人員再編を妨げる労働市場の硬直性があるとされる。さらに、財閥企業による自動化と外注化の進展も雇用創出の妨げとなっている。キム氏らは「高齢者に優しい仕事は高齢者だけでなく、他の多くの労働者にも魅力的です。誰が恩恵を受けられるかは、労働市場の摩擦に左右されているのです」と述べた。研究者らは、今後の課題として、職場そのものを高齢者のニーズに適応させる必要があると強調している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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