2025年06月
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3次元マグノン制御の理論を構築、量子情報処理への応用期待 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は5月22日、ドイツのマインツ大学と共同で、スピン波(マグノン)が3次元空間で複雑に運動することを理論的に示し、非アベル型ゲージ理論に基づく新たなマグノン制御の枠組みを発表した。研究成果は学術誌Physical Review Lettersに掲載された。

KAIST物理学科のキム・セグォン(Se Kwon Kim)教授と、マインツ大学のリカルド・ザルツェラ(Ricardo Zarzuela)博士の研究チームは、フラストレート磁性体と呼ばれる複雑な磁性体内で、マグノンが従来の2次元平面ではなく3次元空間で自由に運動することを明らかにした。これにより、次世代の脳模倣型(ニューロモルフィック)計算や量子情報処理への応用が期待される。

本研究で初めて発見された3種類のマグノンのダイナミクスを記述する非アベル型マグノン量子色力学の模式図
(出典:KAIST)

マグノンは電流を使わずに情報を伝達できるスピン波で、熱を発生させない次世代の情報処理素子として注目されている。従来はスピンが整列した単純な磁性体に基づくU(1)アベル型ゲージ理論により説明されていたが、本研究では複数のマグノンがスピン渦(ソリトン)と相互作用しながら3次元空間を運動する様子を、SU(3)非アベル型ゲージ理論により定式化した。

この結果、フラストレート磁性体には従来の1~2種ではなく3種のマグノンが存在し、それぞれがソリトンと絡み合って動作することが示された。この構造は、クォーク間の相互作用を記述する量子色力学(QCD)に類似しており、マグノンのホール効果など既存の理論を拡張するものとなっている。

キム教授は「本研究は、複雑な磁気秩序内でのマグノンの運動を非アベル型の視点から捉えたものであり、量子磁性研究における概念的な転換点になると考えています」と意義を語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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