韓国の光州科学技術院(GIST)は5月27日、二酸化炭素(CO2)を高付加価値化合物であるアリルアルコールに変換する、世界最高効率の電気化学変換技術を開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Catalysisに掲載された。
この研究は、GIST環境エネルギー工学科のイ・ジェヨン(Jaeyoung Lee)教授が率いる研究チームによって行われた。研究チームは、独自に開発した還元電極触媒リン酸銅(CuP2)と、酸化電極触媒ニッケル鉄(NiFe)を、隙間なく膜電極接合体(MEA)として構成し、CO2を3つ以上の炭素を持つ多炭素化合物であるアリルアルコールに高選択的に変換することに成功した。
アリルアルコールは、アリル基と水酸基を含む構造を持ち、プラスチック、接着剤、香料などの合成原料として幅広く利用されている。従来、この種の多炭素液体化合物の合成は、反応中間体の安定性が低く、ファラデー効率も15%未満と極めて低かった。
それに対し本技術は、ファラデー効率66.9%を達成し、生成速度は電極面積あたり1643 µmol cm−2 h−1に達した。これにより、アリルアルコールの安定的な量産が可能となり、実用化への道が大きく開かれた。さらに注目すべきは、一酸化炭素(CO)を経由する従来の反応経路ではなく、ギ酸(HCOOad)からホルムアルデヒド(HCOad)を経て炭素-炭素結合を形成する新しい反応経路を突き止めた点である。
イ教授は「今回のCO2変換技術は、排出負担が重い石炭・石油化学および鉄鋼業界にとって、新たな事業展開の方向性を示す画期的な成果です」と話し、スケールアップによる産業応用に期待を寄せた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部