2025年07月
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3Dプリント脳モデル開発、神経変性疾患の研究に前進 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学(POSTECH)は6月17日、ヒトの脳構造と神経信号伝達を忠実に再現可能な3D人工脳モデルの開発に成功したと発表した。研究成果は学術誌International Journal of Extreme Manufacturingに掲載された。

アルツハイマー病やパーキンソン病に代表される神経変性疾患は、一度発症すると回復が難しく、早期発見と予測モデルの確立が重要視されている。しかし、脳は複雑な細胞間ネットワークと信号伝達機構を持ち、その解明はほとんど進んでいない。

POSTECHのチョ・ドンウ(Dong-Woo Cho)教授とジャン・ジナ(Jinah Jang)教授が率いる研究チームは、ペ・ミヒョン(Mihyeon Bae)博士、キム・ジョンジュ(Joeng Ju Kim)博士らと共同で、生体模倣型の3Dプリント人工脳BENNを開発した。このモデルでは、神経細胞体を含む灰白質と、軸索が整列した白質という脳の構造を再現している。

研究者らは、電気刺激によりニューロンの軸索成長を一定方向に誘導し、整列し相互接続された神経経路の形成を促進した。これにより、脳本来の信号伝達構造に酷似した機能的な神経ネットワークが構築された。カルシウムイオンの動態をリアルタイムに計測することで、BENNはヒト脳に類似した電気生理学的応答を示すことが確認された。

さらに、同モデルに対し、適度な社交飲酒に相当する0.03%のエタノールを3週間投与することで、神経変性に関連するアミロイドβやタウなどのアルツハイマー病関連タンパク質の蓄積、白質の変形、神経信号の減衰などが観察された。このように、BENNはアルコールの神経毒性を部位ごとに視覚化・定量化できる初の人工脳モデルとしての実証にも成功した。

(出典:POSTECH)

チョ教授は「このモデルは神経接続と電気反応の精密な観察を可能にし、疾患の早期発見や治療法の評価に大きく貢献する可能性を持っています」と語り、ジャン教授は「脳疾患の早期病理学的変化を実験室環境で研究する能力において、重要な前進を示すものです」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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