2025年07月
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廃タイヤを高効率で資源化、新たな化学リサイクル技術を開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は6月26日、使用済みタイヤからゴムやナイロン繊維の原料となる高純度環状アルケンを選択的に生成する新たな化学リサイクル技術を開発したと発表した。研究成果は学術誌Chemに6月18日付で掲載された。

ホン・スンヒョク(Soon Hyeok Hong)教授(右から2人目)と研究チームメンバーら

世界では年間約15億本のタイヤが廃棄されており、環境汚染の主要な要因の一つとされている。タイヤは合成ゴムや天然ゴムをベースに、シリカ、カーボンブラック、酸化防止剤などの添加剤を含む複雑な構造を持つ。特に加硫によってゴム鎖同士が架橋されることで、熱や圧力に強い構造となり、化学的再資源化を困難にしてきた。これまでの廃タイヤの再利用は、350~800℃の高温で分解する熱分解法や機械的処理が主であったが、エネルギー消費が大きく、得られる生成物の品質も低いという課題があった。

KAIST化学科のホン・スンヒョク(Soon Hyeok Hong)教授が率いる研究チームは、二重触媒を用いた新しい反応系を開発した。第一触媒でゴム分子の構造を解きほぐし、第二触媒によって閉環反応を促進し、環状アルケンを高い選択性(最大92%)、高収率(82%)で得ることに成功した。

生成されたシクロペンテンはゴム材料、シクロヘキセンはナイロン繊維の原料として再利用でき、産業的な価値が高い。研究チームはこの技術を実際の廃タイヤに適用し、高純度の環状アルケンへの変換を実証した。低温かつ精密な触媒反応によって副産物を抑えつつ高付加価値の化学品を生み出せることから、熱分解法に代わる革新的な手法と評価されている。さらに、この触媒系は多様な合成ゴムや廃ゴムにも対応可能であり、材料・ポリマー産業における循環型ソリューションの基盤としても期待されている。

図1. 廃ゴムの化学リサイクルのための触媒法を開発
(出典:いずれもKAIST)

同教授は「本研究は、廃タイヤの化学リサイクルに革新的な解決策を提供するものです。今後は次世代の高効率触媒の開発と商業化を通じて、経済性の向上を図り、より広範な廃プラスチック問題の解決に貢献していきたいです」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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