韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は7月3日、中国の臨沂大学と共同で、肝がんなどの腫瘍細胞を選択的に蛍光発光させる新規プローブSLYを開発したと発表した。研究成果は学術誌Journal of the American Chemical Societyに掲載された。

(出典:POSTECH)
グリカンは細胞表面に存在する糖鎖構造であり、細胞間相互作用や免疫応答、がん転移などに関与する。特に、シアリルルイスx(sLex)およびシアリルルイスa(sLea)といった糖鎖は、肝細胞癌を含む多くのがんで過剰に発現しており、有力な診断マーカーとされている。しかし、これらを生細胞中でリアルタイムに検出するのは技術的に困難であった。
研究チームは、認識部位にオキサボロール(酸素とホウ素から成る有機化合物で、糖と結合しやすい特性を持つ)を含む蛍光プローブ群を設計し、その中からsLex/sLeaに高い親和性を示すSLY(Sialyl Lewis Yellow)を同定した。SLYは、肝細胞癌(HepG2)および大腸癌(HT29)細胞において、対象糖鎖に選択的に結合した後、カベオラ(細胞膜に存在する小さなくぼみで、物質の取り込みを担う構造)を介して細胞内に取り込まれ、最終的にミトコンドリアへと集積する特性を持つ。
凍結切片の肝がん組織を用いたin vivoおよびex vivo実験では、SLYががん組織を高いコントラストで蛍光標識し、とりわけ腫瘍の縁を明確に描出できることが確認された。従来のプローブを上回る性能を示しており、精密診断や蛍光誘導手術への応用が期待される。
研究を主導したヨンテ・チャン(Young-Tae Chang)教授は「SLYは、細胞表面のシアリル化グリカンをこれほど精密に識別できる初の蛍光プローブです。肝がんの細胞レベルでの特定を可能にするものであり、将来的には蛍光手術や精密医療に活用されることを期待しています」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部