2025年08月
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アルコールが誘発する肝炎の分子機構を解明 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は7月17日、アルコール摂取により活性酸素種が生成され、肝細胞死と炎症が引き起こされる分子機構を解明したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

KAIST医学工学大学院のチョン・ウォンイル(Won-Il Jeong)教授(中央)と研究チームメンバーら

本研究は、KAIST医学工学大学院のチョン・ウォンイル(Won-Il Jeong)教授の研究チームが、ソウル国立大学ボラメ医療センターのキム・ウォン(Won Kim)教授らと共同で実施した。過度の飲酒が肝疾患を引き起こす仕組みについて、細胞レベルの詳細な解明に成功した。

チョン教授らは、慢性的なアルコール摂取により、小胞型グルタミン酸トランスポーターVGLUT3の発現が高まり、肝細胞にグルタミン酸が蓄積することを確認した。さらに、その後の一時的な大量飲酒が細胞内のカルシウム濃度を急変させ、蓄積されたグルタミン酸が分泌される。このグルタミン酸は、肝臓に常在するマクロファージ(クッパー細胞)のグルタミン酸受容体mGluR5を刺激し、活性酸素種(ROS)の産生を誘導する。これにより、肝細胞死と炎症が進行するという。

2週間のエタノール摂取後、静脈周囲の肝細胞におけるVGLUT3を介したグルタミン酸の蓄積とその過剰飲酒による放出

とりわけ注目すべきは、アルコールによって膨張(バルーン化)した肝細胞がクッパー細胞と物理的に接触し、「擬似シナプス」と呼ばれる構造を形成する点である。従来は脳内でのみ見られるとされていたこの構造が、肝臓においても観察されたのは初めてであり、末梢臓器での新たなシグナル伝達機構の存在を示している。

研究チームは、動物実験によりVGLUT3、mGluR5、ROS産生酵素NOX2のいずれかを阻害すると、アルコールによる肝障害が軽減されることを確認した。さらに、アルコール関連肝疾患(ALD)の患者から採取した血液や肝組織においても、同様の分子経路が活性化していることが示された。

(出典:いずれもKAIST)

チョン教授は「この経路は、アルコール性脂肪肝炎(ASH)の早期診断と治療に向けた分子標的となる可能性があります」と述べ、応用への期待を語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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