トラベルセラピー、認知症治療に期待―感情・認知・感覚で刺激的体験を提供 豪州で研究

AsianScientist - ある研究から、観光業は現在の認知刺激療法に似た体験を提供できるため、近いうちに認知症介入療法として認められる可能性が明らかになった。

旅行は若返り感やリフレッシュと結びつけられることが多い。これは、日常生活のストレスから逃れるためにまさに必要とされるものである。旅行で経験できるユニークな爽快感を否定する者はいない。世界観光機関 (UNTWO) によると、国際観光客は2018年、過去最高の14億人であった。それだけでなく、旅行がいかにメンタルヘルスを高め、治療の一形態として機能するかに注目が集まっている。

旅行には多面的な性質(観光、社会活動、移動の活発化を考えていただきたい)があるため、刺激的な体験となる。認知刺激は脳を活性化し、認知機能の低下を防ぐことが証明されていることから、旅行は認知症介入療法の有望な方法の一つとなっている。オーストラリアのエディス・コーワン大学の学際チームによるこの研究結果は Tourism Management 誌に発表された。

認知症をわずらう人々は世界中で5500万人以上となっている。7番目に多い死因であるにもかかわらず、認知症の治療はとりわけ難しい。血液脳関門(blood-brain barrier=ほぼすべての薬剤が脳に入り込むことを実質的に防いでいる)によって、あるいは病気の進行に関する理解は限られていることによって、医薬品開発はあまり進んでいない。

現在、観光と認知症の治療との関係を理解するにはギャップが存在する。本研究はそのギャップを埋め、主に薬物投与に焦点を当てる典型的な薬理学的治療を超えて認知症の前向き治療として旅行を調べることを目的としている。

オーストラリアのエディスコーワン大学のビジネスロースクールの主任研究員であるジュン・ウェン (Jun Wen) 博士は、観光分野と医療分野の専門家から成り立つ多様なチームと協力して、観光が認知症の人々に与える健康上のメリットの可能性について詳しく調べた。この研究から、旅行介入は感情的、認知的、感覚的なものに至るまで、さまざまな刺激的体験を与えることが明らかになった。典型的な薬物療法と併用すれば、旅行は現在行われている認知症介入療法の質を高めるのに役立つかもしれない。

チームが注目した点は、旅行が医療専門家が推奨する典型的な治療計画と似た、統合的な経験を提供することである。ウェン博士は、これには「運動、認知刺激...そして患者が食事時間と環境に適応すること」が含まれると述べた。チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とその影響により、観光に対する見解とその価値は、解放手段という表面的なレッテルをはるかに超えて広がってきたと確信している。ウェン博士は、この研究により、「観光と健康科学の架け橋となる何か新しいことができる」と期待している。

認知症やうつ病などの精神状態に対する医学的介入の代替としての観光の真の潜在的価値を評価するには、より詳細な調査とデータを収集する必要がある。

(2022年08月01日公開)