都市化が進み、風景は変化を続けている。オーストラリアのある研究チームは、「一般的な」庭に来る鳥はもはや一般的ではないことを発見した。これは鳥だけでなく、人間にとっても問題である。
グリフィス大学の研究者チームは、2つの大規模なデータリポジトリを使用して、昔から庭にやって来る鳥として知られている鳥が、オーストラリアの研究対象の 4つの地域(ブリスベン、シドニー、パース、メルボルン)のすべてで過去数十年にわたって減少していることを発見した。逆に、在来の都市利用者(都市で増加する生物)の小さな群れは、数が増加している。
研究チームは、このような鳥の個体数の変化を、都市や都市空間の拡大、および庭に来る鳥の生息地となる樹木、植物、低木の除去が原因であると突き止めた。この研究で観察された減少種の鳥の中には、希少で絶滅の危機に瀕している鳥もいる。一方でこのリストには、モモイロインコやワライカワセミなど、オーストラリアで一般的な鳥や代表的な鳥も含まれている。この調査結果は、これら一般的な鳥を珍しいものとして再分類することはしていないが、近年、他の鳥種と比較して激減していることを明らかにしている。
クロガオミツスイなど個体数が増えている鳥は、高い独立樹と蜜が豊富な植物があれば、都市化された空間でも問題なく生存できることが多い。ただし、攻撃的な鳥は他の鳥を追い出すため、他の種の鳥にとっては問題となる。
主任研究員でグリフィス大学環境科学部の理学博士候補者であるカーリー・キャンベル(Carly Campbell) 氏は、鳥の個体数の変化を見ると、大型の鳥は都市でうまく暮らす傾向があると説明する。彼女は AsianScientist 誌に対し、「一般的に、大型の鳥の方が多くの資源を利用でき、捕食者に対して脆弱ではないことが多いためです。地面に巣を作る鳥は、ネコ、犬、車、そして人間など対応すべき対象が存在するため、かなり悪い結果となりがちです」と話した。
この研究は、鳥愛好家や一般市民から提出された情報である市民科学データがあったため可能になった。このデータは2 つの大規模なデータリポジトリに収集されている。
1つ目のリポジトリは、バードライフ オーストラリアのBirdDataである。これにはオーストラリアの1800 万を超える鳥が記録されている。もう1つのリポジトリは、コーネル鳥類学研究所のeBirdである。これは、6 億回の観測を行う世界的プログラムである。
どちらのリポジトリも 1954 年からデータを収集している。チームは分析のために、調査対象分野に関するデータを抽出した。いくつかの主な種は増加する一方、他の多くの種は減少しているが、これは科学者が生物的均質化と呼ぶ理論を裏付けている。生物的均質化はあらゆる生態系の生物多様性だけでなく、均質化を引き起こしている人間社会にも脅威をもたらす。
その理由として、鳥は花粉媒介者としての貴重な役割のほかに、山火事を防止する役割もあることが挙げられる。キャンベル氏は、落ち葉をひっくり返し火災の可能性と程度を下げるコトドリを例として挙げる。
Biological Conservation 誌に発表されたこの研究は、都市の鳥の個体数とその経時変化を分析することの重要性を強調している。都市の鳥のパターンと鳥の行動を引き起こすメカニズムについては、長い間、さまざまな研究に記載されてきたが、グリフィス大学の研究では、都市の鳥の個体群の構成の変化と、徐々に消滅しつつある種を調べることがこれまで以上に重要であることが強調されている。
「非常に希少な種や絶滅危惧種、または非常に注目を集める種が研究の対象となることが多いのですが、鳥の集団全体に起こっていることに気づかないこともあります」とキャンベル氏は言う。
「そのため、一般的な種または絶滅の恐れのない種と見なされている種の多くについては、十分な観察がされていないかもしれません。そして、これらの種の保護については思い込みがあるため、環境が急速に変化する中で減少があっても見逃す結果にならないか、危惧しています」
キャンベル氏は、庭や地域社会で繁栄できる種は植生の扱い方により、決定されるので、都市や郊外の植物に注意を払うことが重要だとし、「多様な在来植物、特にアカガシやシナノキなどの蜜の少ない種を植えれば多様な生態系を維持できますし、都市や郊外で多様な鳥類が繁殖する役に立ちます」と語る。
同じことは自宅所有者にも当てはまるが、キャンベル氏は動物に関するいくつかの推奨意見を持つ。「ネコは都市部の鳥にとって大きな脅威でもあるため、ネコを室内で飼うことは非常に重要です」とキャンベル氏は述べる。
BirdData や eBird という市民科学プログラムに参加することで、この種類の研究をさらに進めることができ、庭の鳥の多様性を今後も保ちやすくなる。
「市民科学データの驚くべき点は、時間と空間の両方におけるデータの規模です。私たちが調査した種を専門的に長期にわたりモニタリングを行うには、法外な費用と困難が伴います。市民からのデータを使うことで、他の方法では不可能だったこの研究が実現可能になったのです」とキャンベル氏は話している。
(2022年10月21日公開)