【The Conversation】 巨大な金塊を作るには、石英の鉱脈に数千回の地震を加えればよい

人類は、数千年前から金に惹かれてきた。金採掘は古代ギリシャとローマの文献に記述されており、特に19世紀のゴールドラッシュは現代世界を作り上げる上で大きな役割を果たした。

この黄色く、密度の高い金属は、岩石鉱物である石英の鉱脈で見つかることが多い。これは、温度、圧力、化学変化の結果として、地下の高温の流体からこれら2つが凝縮するためである。

地質学者はこのプロセスをかなりよく理解しているが、大きな金塊には今まで疑問とされていることがあった。自然の流体に溶けている金塊はわずか1ppm 程度である。それならば、どうして数十キロ、あるいは数百キロの塊に濃縮されるのだろうか?

その答えは本日のNature Geoscience誌に報告されているのだが、石英の異常な電気特性と、地震で圧力がかかったときに起こることに関係している可能性が高い。

圧力下の石英

石英は圧電材料と呼ばれる。地球上にはこのような鉱物はそれほど多くないが、石英は非常に豊富に存在する。

圧電材料は、圧力がかかったとき、つまり物理的な力で圧縮または伸張されたときに、瞬間的に電荷を生成する。力が大きければ大きいほど、電荷も大きくなる。

石英は、自然界で最も圧電性の強い物質の1つである。その圧電性により、バーベキューの火種として使われ、また、ほとんどの腕時計の針を動かすことができる。

地震のときは地球の地殻プレートの動きによって地中の石英に大きな圧力がかかるため、電荷が大量に蓄積される。これが、地震のときに空に見える閃光や光である「地震光」の原因ではないかと考える者もいる。

この圧電性は、金塊の形成にも関係しているのだろうか?

溶解した金

巨大な金塊は、地震の際に岩の断層を通って流体が流れる場所で見つかることが多い。ここは、金を含む可能性のある石英の鉱脈が形成される場所である。

数百回から数千回の地震により析出されるため、鉱脈内の石英の結晶は数千回の圧力を受けていることであろう。

金が自然の流体に溶解すると、他の分子と結合することが多い。何らかの原因でこれらの分子が不安定になると、金の原子がこれらの分子から飛び出し、近くの表面に析出することがある。

分子を不安定にさせる要因の1つは、電子と分子の衝突である。地震により圧力がかかると石英に電子が蓄積することはわかっているが、この電子を流体に溶けた金に移動させることはできるのか?

それを調べる方法が必要だった。

研究室での小さな地震

実際の地震を利用しての実験はやはり危ないことであるため、研究室での地震シミュレーションを試みた。地震の際に石英結晶が感じる「がたつき」を再現する実験を設計したのである。

実験では、金を含む液体に石英結晶を浸し、モーターを使い、その結晶の前後の方向に圧力をかけた。モーターのヘッドが石英に当たるたびに、電圧が発生した。

その後、石英のサンプルを電子走査顕微鏡で調べ、石英の表面に金が析出していないか確認した。結果はショッキングなものであった!(失礼。)

石英上に形成された金のナノ粒子を示す走査型電子顕微鏡写真
(提供:Christopher Voisey)

金は石英の表面に析出しただけでなく、ナノ粒子に凝集してもいた。しかも、このプロセスが始まると、金は石英の上よりも既存の金の粒の上に析出しやすくなった

石英は電気絶縁体であり、金は電気を伝動するため、これは実に理にかなっている。

既存の金粒子は近くの石英から電位を取り入れ、金を析出させる反応の中心となる。

工業用金メッキもほぼ同じように作用するが、この場合、他の金に金メッキが施される。

金塊に戻る

さて、研究室の中での石英と金の作用の仕組みが分かったところで、地質学についてもう一度考えてみたい。

これまでに発見された金塊のうち、最も大きなもののいくつかは地震が起きやすい岩石の断層を通って金を含む流体が流れる石英の鉱脈の中に存在した。

地震活動中、石英に圧力がかかると圧電電圧が発生し、流体から金が引き出される。金が析出し、流体の浸透が続くと、その後、金は圧電メッキの焦点となる。そのため、金の析出は時間の経過とともに大きくなる。

何百万年もの間、このプロセスが何度も繰り返される。これが、この種の石英の鉱脈に大きな金塊が見られる理由なのだろうか?少なくとも一部は当てはまると考えられる。

(2024年10月1日公開)

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