2021年04月
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光合成から統計学の応用まで 豪州科学アカデミー栄誉賞、ANUから3氏受賞

オーストラリア国立大学(ANU)は3月11日、オーストラリア科学アカデミー(Australian Academy of Science)栄誉賞の受賞者のうち、同大に所属する以下の3人の研究者が受賞したことを発表した。

オーストラリア国立大学(ANU) ホームページより

まず、スザンヌ・ヴォン・ケメラー(Susanne von Caemmerer)教授は、光合成に関する従来の考え方を一変させたことで知られ、作物の生産量増大が可能となるように光合成の仕組みを改善し、気候変動にも適応させた功績が評価された。この研究はいま、世界中で応用されている。

「私の研究は、光合成の数学的モデリングに関するものです。食糧生産を増産する観点で多くの可能性を秘めており、とても魅力的な調査分野です」(ケメラー教授)

ケメラー教授は今回、スザンヌ・コリー・メダル(Suzanne Cory Medal)を授与された。このメダルは分子生物学者で元オーストラリア科学アカデミー会長のコリー氏の名を冠したものだ。

「私はコリー氏を尊敬しており、その名を冠した賞を受賞できてとてもうれしい」とケメラー教授は喜びを語った。

次に、デイビッド・マクレランド(David McClelland)教授は、重力波の検出において重要な役割を果たしたとして、トーマス・ランケン・ライル・メダル(Thomas Ranken Lyle Medal)が贈られた。

2015年に地球上で重力波を初めて検出することに成功した国際LIGOプロジェクトでオーストラリアの主任研究員として参画。

「わたしたちはアインシュタインの一般相対性理論を応用し、シグナルがどのように見えるかを計算しました。非常にかすかな変化を捉えるため、検出器には高い精度が求められました。わたしたちが開発した高精度測定技術にはさまざまな応用の可能性が広がります」とマクレランド教授。

最後に、ジャニス・シーリー(Janice Scealy )博士にはモラン・メダル(Moran Medal)が授与された。シーリー博士が開発した新しい統計分析手法は、食料と住宅費用の総支出の予測から地球の磁場の正確な測定まであらゆる場面で応用されている。

「モラン・メダルの受賞者グループの一員になれて光栄です。統計学に約20年間、携わる中で、画期的な出来事となりました」とシーリー博士は話した。

モラン・メダルは2年に一度、若手研究者に贈られている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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