オーストラリアのシドニー大学は6月23日、ラップやビニール袋等の軟質プラスチックごみのリサイクル率を向上するため、人工知能(AI)を利用して軟質プラスチックを含んだ資源ごみを分別するロボットを開発したと発表した。
軟質プラスチックを分別するロボット(写真提供:シドニー大学)
オーストラリアでは、家庭から出る軟質プラスチック、びん、古紙等の資源ごみを同じ容器にまとめて出す方法が一般的。こうして収集された軟質プラスチックの94%が埋立て処理されている。軟質プラスチックはごみ分別装置にからまって故障の原因となったり、他の資源ごみの処理工程に混入して汚染物質を排出したりする可能性があるため、資源回収施設では、非効率的かつ危険な手作業での分別が行われている。
そこで同大学の研究者らは、軟質プラスチックのリサイクル率を改善するため、連邦政府の「共同研究センタープロジェクト(Cooperative Research Centre Project)」の助成を受け、民間企業と協力して、AIを用いて資源ごみを分別するスマートで自動化されたロボットシステムを開発した。
IoT(モノのインターネット)・電気通信センター(Centre for Internet of Things、IoT and Telecommunications)のブランカ・ヴセティック(Branka Vucetic)教授によると、このシステムでは、AIとコンピュータービジョンを使用して資源ごみのさまざまな形を識別する方法を学習し、ごみを効果的に「見て」「分別」できるようになるという。これにより、純度の高い軟質プラスチックをリサイクル処理に回すことが可能になる。
同大学電気・情報工学科(School of Electrical and Information Engineering)のリ・ヨンフイ(Yonghui Li)教授は、軟質プラスチックは適切で安全な分別方法がないことから長いこと循環型経済や廃棄物管理の課題であったとし、「IoT技術を用いて、この問題を解決するための独自のロボットを開発できた」と成果を強調する。
このシステムはカーブサイクル(CurbCycle)社のプラスチックごみ分別促進プログラムの一環として、資源回収施設に導入される。分別された軟質プラスチックは、油や様々な高価値化学物質の生産に再利用される予定。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部