2021年09月
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遺伝子モデルと数理モデルでCOPDの経過の個人差を研究 オークランド大

ニュージーランドのオークランド大学(University of Auckland)は同大学の研究チームが、遺伝子モデルと数理モデルを用いて、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)へのかかりやすさや治療への反応を患者ごとに予測する方法を開発していると発表した。本研究は同大学教授のメリン・タファイ(Merryn Tawhai)博士とジャスティン・オサリバン(Justin O'Sullivan)博士が主導する。発表は6月29日付。

COPDはニュージーランド人の死因上位を占める疾患の1つである。主な原因は喫煙だが、かかりやすさ(感受性)や治療への反応には個人差がある。また、タファイ博士によると、電子タバコを吸う人もCOPDに似た疾患を発症する確率が高いという。

本研究はダインズファミリー財団(Dines Family Foundation)の支援の下、オサリバン博士が専門知識を持つCOPDの形成や感受性の遺伝学的解析と、タファイ博士が研究する正常な肺とCOPD患者の肺の定量的解析や計算モデルを組み合わせ、患者ごとの疾患と治療の影響を特定する方法を開発している。

具体的には、DNA配列やDNAの折りたたみ、関連する細胞、組織内の細胞同士の相互作用、細胞内のタンパク質、肺における組織損傷の分布等、さまざまな尺度でCOPDを研究し、個人ごとの疾患の経過を予測する。一人一人に応じた疾患のリスクや経過を提示することで、禁煙等の行動へのモチベーションを高める効果も期待できる。

タファイ博士は、タバコや電子タバコを吸う人に個別のリスクプロファイルを示すことができれば、公衆衛生面で効果があると考えている。「治療を待つよりも予防する方がはるかに良い」とタファイ博士は語る。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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