2021年09月
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太陽内部の「対流層」の構造で新たなモデルを発表 シドニー大

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は8月5日、同大学の数学者ジェフリー・バシル(Geoffrey Vasil)博士が、米国の研究者と共同で、太陽内部の「磁気ダイナモ(magnetic dynamo)」の謎を解明する理論的枠組みを提示したと発表した。研究成果は学術誌、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に掲載された。

このモデルを発展させることで、磁気嵐等、地球近傍の宇宙天気を予測できる可能性がある。

太陽表面付近に円形の対流セルがあるとする従来の理論に基づいて、太陽の内部構造を示したイメージ図。バシル博士の新しいモデルでは、太陽の磁気ダイナモを駆動しているのは、より細くて回転する「葉巻型」の対流セルであると考えられている
提供:米航空宇宙局(NASA)

太陽の内部構造の表面側には、約20万キロメートルにわたって超高温のプラズマが乱流を作っている「対流層」(convection zone)が存在する。従来の理論ではいくつもの大きな渦(セル)がこの層を構成しているとされていたが、このセルの存在が確認されたことはなく、対流層に関する長年の難題となっていた。

バシル博士は、内部の流れが、丸いセルではなく、回転する葉巻のような細長い柱を形作っていると考えることでこの謎を解明した。このような形になる理由は、従来考えられていたよりも太陽の自転の影響が大きいためだという。このモデルは観測されたデータと合致し、太陽の電磁気的挙動に関する理解を大幅に進められる可能性があるとバシル博士は語る。

1859年に起こった「キャリントン・イベント」のような大規模な磁気嵐が現代に発生すれば、世界中の電子機器や通信インフラに影響が及び、復旧に数か月を要する可能性があるという。

今回発表された理論モデルを観測に基づき発展させれば、太陽の内部プロセスをより正確にモデル化し、こうした現象の予測に活用できる可能性がある。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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