オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)化学科のダグ・マクファーレン(Doug MacFarlane)教授とメガ・カー(Mega Kar)博士が率いる研究チームが、電池材料を生産する地元企業カリックス(Calix)と共同で、リチウムイオン電池の材料として従来よりも高い性能を発揮するリチウム塩を開発した。8月16日に発表した。研究成果は学術誌 Advanced Energy Materials に掲載された。
研究チームは新たなアニオンから熱的安定性が高く不燃性の液体塩を作成し、高温で動作する蓄電池に役立てたいと考えている
リチウムイオン電池は電気自動車(EV)等の次世代テクノロジーにおいて中心的な役割を果たすと期待されているが、現在使用されている材料には安全性と性能の両面で課題がある。
これについて「電解質材料として用いられているリチウム塩、ヘキサフルオロリン酸塩には発火の危険や毒性の問題がある」とマクファーレン教授は語る。
本研究では「空気に触れても影響を受けない安全なフルオロホウ酸塩を開発することを目標にした。この材料をマンガン酸リチウムの正極材と共に用いたリチウム電池は空気に触れた後でも1,000サイクル以上使用できた。従来のヘキサフルオロリン酸塩と比べ、驚くべき進歩だ」と論文の筆頭著者であるビナヤク・ロイ(Binayak Roy)博士は語る。
さらに、この電解質材料を用いた高電圧リチウム電池は、従来の塩を用いたリチウム電池を大幅に上回る性能と、高電圧下での優れた安定性を示したという。
この研究は、エネルギー分野の官学連携を推進するオーストラリア研究会議(ARC)の未来エネルギー貯蔵技術トレーニングセンター(StorEnergy)の支援を受けて実施された。
カー博士は今回開発した材料から「熱安定性が高く不燃性の液体塩を作成し、高温で動作する蓄電池の材料として役立てたい」と展望した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部