オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究チームが、極超音速(hypersonic)航空機の熱管理問題を解決できる可能性のある3Dプリント触媒を開発した。9月8日に発表した。研究の成果は英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)が発行する学術誌 Chemical Communications に掲載された。
3Dプリント触媒 (写真提供:RMIT)
マッハ5を超える極超音速(hypersonic)航空機が実現すれば、飛行時間を大幅に短縮できると期待されている。しかし、開発に向けた最大の課題の1つが、高速で飛行する際に生じる熱の管理である。
今回の研究では、実験室内での実証実験により、この触媒が、極超音速飛行の燃料として動力を提供しながら、冷却も行える可能性があることが示された。
研究チームは、合金を材料とする小さな熱交換器を3Dプリンターで作製し、合成鉱物のゼオライトでコーティングした。さらに極超音速で飛行する際の温度条件と圧力を実験室レベルで再現し、機能を検証した。
この構造物が温まると、金属の一部がゼオライトの骨組みに移動する。これが、触媒の効率性を実現するために不可欠なプロセスとなる。博士課程の研究者で論文筆頭著者のロクサナ・ヒュブシュ(Roxanne Hubesch)氏はこの触媒を「ミニチュアの化学反応器のようなものだ」と説明する。
ヒュブシュ氏は今回の成果について「触媒の新たな方向性を示すものだ」と強調。そのうえで、「プロセスを完全に理解し、最も効果的な合金の配合を見つけ出すにはさらなる研究が必要だ」とも語った。
研究者らは、この研究の成果を、車の大気汚染管理や、ウイルス管理を含む室内空気質の改善にも応用したいと考えている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部