オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は、同大学の研究者が開発した安全で低コストの臭化亜鉛電池(zinc-bromide batteries)が実用化される見込みであると発表した。9月10日付。
「ジェライオン(Gelion)」のラボ (写真提供:シドニー大学)
同大学からスピンアウトした企業「ジェライオン(Gelion)」が、西シドニーに位置する電池メーカー「バッテリーエナジーパワーソリューションズ(Battery Energy Power Solutions)の工場で、「ジェライオンエンデュア(Gelion Endure)」電池を製造し、国内市場に投入する。
シドニー大学のトーマス・マッシュメイヤー(Thomas Maschmeyer)教授は、流れる電解質を安定性のあるゲルに置き換えることで、臭化亜鉛の化学的性質を利用した画期的な電池を開発した。同教授は「安全、丈夫、リサイクル可能で、高価な冷却・保守システムを必要とせず、発火もしない」とこの電池の魅力を語る。
この電池は50℃の温度下でも、機能を損なうことなく放電できる。約700度の焼き網の上で1.5時間加熱した試験でも、発火せず動作を続けたという。
シドニー大学副総長のマーク・スコット(Mark Scott)教授は、「マッシュメイヤー氏の革新的な基礎研究を商用化することができ誇りに思う」とし、「西シドニーのハイテク関連の雇用を創出し、持続可能な経済成長という我々の目標に合致する」と雇用面での効果にも期待を寄せた。
ジェライオン社は2022年にこの電池の量産試作を開始する予定。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部