2021年11月
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気候変動で鳥のくちばしや耳に変化 豪ディーキン大学が研究

オーストラリアのディーキン大学(Deakin University)は、気候変動に伴い、鳥のくちばしや耳をはじめ動物の「付属肢」が大きくなっているという同大学の生態学者の研究結果を発表した。10月5日付。この研究をまとめた論文は学術誌Trends in Ecology & Evolutionに掲載された。

鳥にも気候変動の影響が...。ビセイインコ(左)の英名はRed-rumped parrotで、腰の部分には赤色部があり英名の由来となっている。右はキンショウジョウオウム(king parrot)

ディーキン大学のサラ・ライディング(Sara Ryding)博士候補とマシュー・シモンズ(Matthew Symonds)准教授が率いる研究チームは、動物の体形変化に関する先行研究を整理し、動物たちが附属肢を大きくすることで気候変動に対応しているという説を裏付けた。この研究は世界の注目を集め、欧米のメディアでもたびたび取り上げられている。

例えばオーストラリアに生息する複数種のインコのくちばしは、1871年以降、夏の気温の上昇と相関して4~10%大きくなっているという。また、モリアカネズミ(wood mouse)の尾の長さやマスクトガリネズミ(masked shrew)の尾や脚の大きさ、気候が温暖な場所に生息するコウモリの翼の大きさも増加していた。

付属肢は体表面から熱を逃し、体温調節において重要な役割を果たす。研究者らは、気温の上昇とともにこうした形態変化も続くと予想する。

ライディング氏は「環境の変化は通常は非常にゆっくりと起こり、動物は数千年(またはそれ以上)をかけて対応してきた。現在、かつてない速度で気候が変動しているために、動物も迅速に対応せざるを得なくなっている 」と語る。

今後、ライディング氏らは過去100年間の鳥類標本を3Dスキャンし、オーストラリアの鳥類の形態変化をより詳細に調査することを計画している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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