オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究者は、有機廃棄物と廃プラスチックを用いてカーボンナノチューブとクリーンな液体燃料を生産するアップサイクル技術を開発した。9月29日に発表した。研究の成果は学術誌 Journal of Environmental Management に掲載された。
新しいアプローチで生成されたカーボンナノチューブの拡大図 (写真提供:RMIT)
この手法は、2段階の手順からなる。まず農業廃棄物や有機廃棄物を、炭素を豊富に含むバイオ炭に変換する。次にこのバイオ炭を触媒として用い、汚染物質を除去しながらプラスチックを高品質の液体燃料に変える。これと同時に、プラスチック中の炭素からカーボンナノチューブを生成し、バイオ炭の表面をコーティングする。
オーストラリアでは2022年1月1日より一部の廃プラスチックの輸出が禁止される。政府は2025年までにプラスチック包装の70%をリサイクルまたは堆肥化する目標を掲げているが、現状、プラスチックのリサイクル率は9.4%程度に留まっている。
今回の研究は、低コストのバイオ炭を触媒として、プラスチックから汚染物質を排出しない燃料と炭素ナノ材料を生産した初めての試みとなる。
研究を率いたカルピット・シャー(Kalpit Shah)准教授は、「使用済みプラスチックと有機廃棄物という2種類の廃棄物を1つのサーキュラーエコノミー(循環型経済)手法でアップサイクルすることにより、経済面と環境面で大きな利益が得られる」と期待する。
研究チームはプラスチック・廃棄物業界と連携し、この技術を応用できる他の分野を探索したいと考えているという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部