オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、同機構の科学者が、オーストラリアの幅広い地域に生息するオオコウモリからヘンドラウイルスの新しい遺伝子型「HeV-g2」を発見したと発表した。10月14日付。この研究成果をまとめた論文は学術誌 Virology に掲載された。
ヘンドラウイルスはオオコウモリからウマ、ウマからヒトへと感染する
(写真提供:CSKK, Flickr CC-BY NC ND-2.0.)
この論文が発表される数日前、ニューサウスウェールズ州のニューキャッスルでHeV-g2に感染したウマが発見された。記録上、国内最南部のヘンドラウイルス感染例となる。
ヘンドラウイルスはオオコウモリからウマ、ウマからヒトへと感染する。これまではクイーンズランド州とニューサウスウェールズ州の一部地域のオオコウモリから発見されていた。今回、CSIROのオーストラリア疾病対策センター(ACDP)の研究者は、2013年から2021年のオオコウモリの標本を調査し、ビクトリア州、南オーストラリア州、西オーストラリア州に生息するオオコウモリからこの新型ヘンドラウイルスを発見した。
CSIROのキム・ハルピン(Kim Halpin)博士は、「HeV-g2は、オーストラリアでオオコウモリが生息している地域であればどこでもウマに感染するリスクがある 」と指摘する。
ハルピン博士は、「ヘンドラウイルスがオオコウモリからヒトへと直接感染した例は報告されておらず、常にウマを介している。この新型も同様と考えている 」とし、対策に関しては「既存のウマ用ヘンドラウイルスワクチンが新型にも効果を発揮すると予想している」 と述べた。
CSIROはシドニー大学(University of Sydney)との共同研究を通じて、獣医師や国内の研究機関と連携し、ヘンドラウイルス感染の兆候があるウマに高品質な検査を実施できるよう取り組んでいる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部