オーストラリアのマードック子ども研究所 (MCRI) は、同国のメルボルン大学と新しい手法で作成したインフルエンザの細胞培養ワクチンを試験し、2歳から18歳までの子どもや青少年らに十分な免疫反応をもたらしたことを発表した。10月15日付。この研究結果は、2歳の子どもを対象としたインフルエンザの細胞培養ワクチンの絶対的な有効性について初の報告であり、学術誌 The New England Journal of Medicine に掲載された。
インフルエンザ・ウイルスが気道細胞に結合するイメージ (写真提供:CDC, U.S.A.)
2017年から2019年にかけて 行われたこのワクチンの無作為化比較試験では、オーストラリア、タイ、エストニア、フィンランド、リトアニア、ポーランド、スペイン、フィリピンの4514人が参加し、ワクチン全体の有効性は54.6%となり、3回のインフルエンザシーズンと8カ国すべてにおいて有意性が示された。
例年、世界人口の5~15%がインフルエンザに罹患し、最大65万人の呼吸器関連死が発生している。従来のワクチン製造法は鶏の受精卵でウイルスを培養、精製したものが使われているが、卵馴化と呼ばれる変異により抗原性が変異し、ワクチンの有効性が低下する という課題があった。
今回試験に用いた4価インフルエンザのワクチン (QIVc) は培養細胞でウイルスを増殖させる手法を用いている。主任研究者であるMCRIのワクチン・免疫研究グループ (VIRGo) 責任者のテリー・ノーラン (Terry Nolan) 教授 は 「 この方法を用いることで、世界保健機関(WHO)が選定したインフルエンザ株と完全に一致するワクチンを製造することができ、従来に比べ高い効果が得られるだろう」とし、「パンデミックが発生した場合に、ワクチン製造の拡張性や生産速度の向上など、さらなる利点をもたらす可能性もある」 と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部