2021年12月
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新たなモデリング手法でバッテリー用金属の需給を予測 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は11月3日、物理的ストック・フローフレームワーク(Physical Stocks and Flows Framework: PSFF)というモデリング手法を用いた予測によると、電気自動車(EV)のバッテリーに用いられる金属の需要供給は、現在の一般的な予測よりも複雑な軌道を描く可能性があると発表した。この分析結果は、CSIROの報告書 Known Unknowns: the devil in the details of energy metal demand に掲載された。

同報告書では、EVバッテリーの材料となるコバルト、リチウム、ニッケルの3種類の金属を、3通りのEV普及シナリオの下で検討した。

例えば、高性能リチウムイオンバッテリーの重要な原料となるコバルトやニッケルなどの需要は当分増加し続けると一般には予想されている。しかし、PSFFに基づき、バッテリー化学の変化やEV普及の加速、リサイクル率の向上などの要因を考慮した場合、新たに採掘されるコバルトはごく短い需要不足の期間を経た後、供給過剰に転じる可能性がある。また、ニッケルの需要は早期にピークを迎えた後で急落する。一方、リチウムの需要は比較的長く続いた後、徐々に低下すると予測された 。

CSIROの「クリティカルエネルギーミッション(Critical Energy Metals Mission)」を率いるジェラド・フォード(Jerad Ford)博士はこの結果について「これらのバッテリー用金属の需要が互いに似た動きをするという定説に異論を呈するものだ 」と語る。 PSFF手法はバッテリーに限らず複数の金属を用いる新技術に適用でき、市場に関する仮説の検証と、ビジネスへの影響の予測に役立つという。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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