2021年12月
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リソグラフィー不要のカーボンナノチューブ配列を開発 豪中の共同チーム

オーストラリア研究会議励起子(れいきし)科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(ARC Centre of Excellence in Exciton Science)は11月11日、同機関と中国の華南師範大学(South China Normal University)、メルボルン大学(University of Melbourne)の共同研究チームが、カーボンナノチューブの大きな集合体を、従来よりコストが安く簡単な方法で作成する方法を発見したと発表した。研究成果は学術誌 Nanotechnology に掲載された。

カーボンナノチューブの一例

カーボンナノチューブは、通常、炭素源とナノサイズの鉄、ニッケル、コバルトなどの金属触媒を用いた化学反応を通じて物質の表面に成長させる。

事前に決定したパターンでカーボンナノチューブを形成するには、金属触媒の鋳型(template)が必要になる。この鋳型は、多くの場合、リソグラフィーと呼ばれる高価で複雑なプロセスが用いて作成する。

今回の研究では、リソグラフィーを用いずに、カーボンナノチューブの強力な集合体を組み立て、配列する方法を開発した。

研究チームは、液体(この場合は溶融金属)を表面から除去する「ディウェッティング(dewetting)」と呼ばれる現象を利用してニッケル触媒の粒子を組織化した。その後、シリカナノ粒子層に重ねた金属薄膜に熱を加えると、島状金属(metal island)が形成され、これが、島状のニッケルの正確な配置を作るための鋳型として機能する。

論文著者のエセル・アキノグル(Eser Akinoglu)博士 は、「通常、鋳型を作るには光、X線、電子線等によるリソグラフィーを使用するが、この方法ではそれらが全て不要になる。リソグラフィーなしでカーボンナノチューブの周期的配列を成長させたのはこれが初めてになる」と語った。

この方法で作成されたカーボンナノチューブは水をはじく性質を持ち、ハスの葉の自浄力「ロータス効果」等、自然界の性質を模した生体模倣デバイスに利用できる可能性がある。

研究チームはこのカーボンナノチューブ配列を、医療インプラントの殺菌に応用することを検討している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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