オーストラリアのサンシャインコースト大学(University of the Sunshine Coast)は、ヒトの胎盤(placenta)の細胞構造を模した初めての3次元システムを設計した同大学の研究者が、連邦政府の研究助成金を獲得したと発表した。
この新システムを用いて、妊娠合併症(pregnancy complications)につながる胎盤の異常の原因を細胞レベルで解明できる可能性があるという。
この研究は国家保健医療研究会議(NHMRC)研究助成プログラム「Ideas Grant」から約39万5,000豪ドルを授与された。
助成金を獲得したジョージア・ケーファー(Georgia Kafer)博士は、「3Dプリントで作製した足場(scaffold)を用いた垂下型培養システム(hanging culture system)で細胞を成長させる方法により、胎盤の実際の構造を模した初めてのモデルを作成した」と語る。
ケーファー博士によると、胎児発育不全(fetal growth restriction: FGR)は、胎盤の栄養膜細胞(trophoblast)の炎症や死を引き起こす酸化ストレスと密接に関連している 。しかし、「これまではヒトの胎盤組織を正確にモデル化できなかったため、酸化ストレスによる胎児の健康への影響に関する多くの疑問が未解決だった 」という。
ケーファー博士は、今後は高分解能顕微鏡や分子生物学的技術等、複数の手法の組み合わせによる効果を検討すると述べた。
発表は2021年11月8日付。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部