オーストラリアのラ・トローブ大学(La Trobe University)は1月17日、同大学の研究者らが、「ドラゴンリザード(dragon lizard) 」というトカゲの性が、他の動物のように遺伝子自体の差異で決まるのではなく、後成遺伝学的(エピジェネティック)要素により決定されることを発見したと発表した。
研究成果は科学誌 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:PNAS(全米科学アカデミー紀要)に同日付で掲載された。
キャンベラ大学(University of Canberra)の研究者と共同で本研究に取り組んだラ・トローブ大学のジェニー・グレイブス(Jenny Graves)教授は、今回の発見に驚いたといい、次のように解説した。
「雄と雌の性染色体には互いを区別するDNA配列上の違いがみられなかったが、顕微鏡で観察したところ、雌に特異的な染色体(W染色体)には、大量の高頻度反復(highly repetitive)DNA(ジャンクDNA)が存在した。 この研究のブレイクスルーは、この反復DNAがW染色体を歪ませ、性遺伝子の読み取りを誤らせるのではないかと気づいたところにある」
この研究は、地球上の全生物約180万種のゲノム配列を決定することを目指す国際共同プロジェクト「Earth BioGenome Project」の成果の一つとなる。グレイブス教授は「ドラゴンリザードのような珍しい種を解析することで、遺伝子や遺伝子調節に関する新たな情報が得られる」 と語り、同プロジェクトが生物学研究にもたらす意義を強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部