オーストラリアのジェームズクック大学(JCU)は1月21日、気候変動の影響を受けた生育環境の変化により、サメが近い将来「適応、移動、死」のいずれかを選ぶこととなるとする研究結果を発表した。この研究をまとめた論文は学術誌 Marine Ecology Progress Series に掲載された。
生まれて間もないサメの仔魚は、餌を確保し捕食者から身を守るため、礁湖やマングローブ林等、浅い沿岸部の「成育場(nursery)」で育つ。しかし近い将来、地球温暖化によってこうした環境の条件が過酷になると予想されている。
(提供:JCU)
「浅い沿岸の生息域では、サメの子どもは既に高温に耐えなければならなくなっている 」と、論文の筆頭著者であるJCUのイアン・ブユコス(Ian Bouyoucos)博士は説明する。
ブユコス博士によると、生育場は地域のサメの個体数を維持するうえで重要な役割を担っているが、気候変動による影響がますます深刻化しているという。
共著者のジョディ・ラマ―(Jodie Rummer)准教授は、これは「適応か、移動か、死か」の問題だといい、「気候変動による熱波がより頻繁に、深刻に、長期間生じるようになっている」と指摘する。仔魚がこれらの成育場で生き残ることができる許容限界(tolerance limit)温度を見極めるにはさらに調査が必要だという。
捕食者であるサメがいなくなれば、海洋の生態系が崩壊するおそれがある。「私たちは引き続き、サメの研究と保護に取り組む必要がある」とブユコス博士は語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部