オーストラリアのジェームズクック大学(JCU)は1月28日、侵入種(invasive species)であるアシナガキアリ(Yellow crazy ant)がオーストラリア固有のトカゲ(skink)の個体数を減少させているという研究結果を発表した。この研究をまとめた論文は学術誌 Biodiversity and Conservation に掲載された。
JCUの准教授で侵入種の行動を専門に研究するロリ・ラック(Lori Lach)博士は、「侵入種のアリは在来種のアリや他の昆虫を排除または捕食するが、トカゲのような脊椎動物への影響はあまり研究されていない」 と語る。
ラック博士によると、アシナガキアリの駆除に用いられる殺虫餌(bait)が他の種に有害な影響を及ぼしている可能性もあり、この影響は詳しく調査されていなかった。
そこで研究チームは、
―という4つの異なる環境で、トカゲに対する殺虫餌とアシナガキアリの影響を調査した。
その結果、「アシナガキアリの個体数が多い地域では小型のトカゲがほぼ存在しなかった」 と、論文共著者のコンラッド・ホスキン(Conrad Hoskin)博士は説明する。
殺虫餌を使用しておりアシナガキアリの個体数が少ない地域と殺虫餌を使用しておりアシナガキアリがいない地域では、トカゲの個体数は対照地域と同様であった。また、より大型のトカゲでは、アシナガキアリによる影響はみられなかったという。
ラック博士は「このデータは、殺虫餌ではなくアシナガキアリが熱帯雨林に生息する小型のトカゲへの直接の脅威となっていることを示唆している」 と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部