オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は2月11日、グレートバリアリーフのナマコ(sea cucumber)の生息数が乱獲により減少し、危機に瀕しているという最新の研究結果を紹介した。この研究は同大学とクイーンズランド大学(University of Queensland)のチームが主導し、論文はBiological Conservationに発表された。
食用に捕獲されるナマコは主に中国で消費され、世界の市場規模は年間2億米ドル(約230億円)と推定される。
シドニー大学で海洋生物学を研究するマリア・バーン(Maria Byrne)教授は「ナマコは『海の掃除機』として知られるように海底の砂をきれいにし、礁の健全な環境を保つうえで不可欠な役割を担っている」と語る。
グレートバリアリーフのナマコ(提供:Steve Purcell氏)
グレートバリアリーフには、絶滅危惧種(endangered)または危急種(vulnerable)に指定されている16種のナマコのうち10種が生息する。しかし、高値で取引される種の一部が、乱獲により減少していることがデータにより分かった。
特に減少が懸念されているクロナマコ科のteatfish と呼ばれるグループは、捕獲と輸出を規制する根拠となるワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species: CITES)に登録されている。それにもかかわらず、これらのteatfishのうち2種の漁獲量は、グレートバリアリーフがあるクイーンズランド州の総漁獲量の20%以上を占めていた。
バーン教授は「今後はグレートバリアリーフで漁獲される全ての熱帯ナマコの資源量を定期的に評価するための強制的な政策の枠組みが不可欠」 と、ナマコを保護するための法規制の必要性を訴えた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部