2022年06月
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薬剤耐性菌への市中感染で尿路感染症等の死亡率が上昇 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は4月5日、薬剤耐性菌への市中感染によって、尿路感染症(urinary tract infection:UTI)等の感染症による死亡リスクが高まったとの研究結果を発表した。この研究の成果は3月22日にオープンアクセスジャーナル Open Forum Infectious Diseases に報告された。

基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBLs)産生菌のイメージ (提供:CSIRO)

薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)とは、細菌等の微生物が薬への抵抗力を持つことであり、多くの場合、薬の誤った使用や過剰使用により生じる。

薬剤耐性菌が人から人へと伝播する方法には、医療施設内での院内感染(hospital transmission)と市中感染(community transmission)がある。今回の研究は院内感染に比べ、これまであまり研究されていなかった市中感染による負荷に焦点を当てた。

CSIRO、クイーンズランド工科大学(QUT)、クイーンズランド大学(University of Queensland)は、クイーンズランド州の病院134カ所で、市中感染した患者2万1,268人のデータを解析した。

その結果、市中感染で薬剤耐性菌に感染した患者が死亡する割合は、薬剤感受性を持つ菌に感染した患者と比較して、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によるUTIでは2.43倍、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)細菌による血流感染では3.28倍高かった。

CSIROのテレサ・ウォズニアック(Teresa Wozniak)博士は、「市中での薬剤耐性菌感染の負荷を追跡することは、AMRの拡大の程度や、最適な緩和策を理解するために不可欠」と述べた。

この研究の成果は、治療を受ける集団のデータに基づくAMR管理プログラムの策定を含む、地域社会でのAMR管理の指針になると考えられている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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