オーストラリア研究会議(ARC)の励起子科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(Centre of Excellence in Exciton Science)は5月17日、同センターの研究者らが、赤外線熱(infrared heat)を電力に変換する装置の試験に成功したと発表した。この研究の成果は学術誌 ACS Photonics に掲載された。
日中に地表を暖めた太陽のエネルギーは、夜になると冷たい宇宙空間へと失われてしまう。今回検証されたような熱を捉える技術により、近い将来、この夜間に地球から放出されるエネルギーを利用できるようになる可能性がある。
(提供:ARC)
ニューサウスウェールズ大学(UNSW Sydney)の研究チームは、暗視ゴーグルと同様の技術を用いる「熱放射ダイオード(thermo-radiative diode)」という発電装置の試験を行った。
研究チームを率いた同センターのニコラス・イーキンズ・ドークス(Nicholas Ekins-Daukes)氏は以下のように解説する。
「太陽光発電では太陽を熱源、相対的に冷たい地上のソーラーパネルを吸収体として電気を生み出す。一方、地球から宇宙空間への赤外線放射では、宇宙空間との比較で地球が相対的に温かい物体となる。同じ熱力学の原理に基づき、この温度差を利用して電気を生み出すことができる」
今回生成されたエネルギー量は少量(太陽電池の約0.001%に相当)であったが、この試験は重要な概念実証を提供した。
チームは現在、この結果をもとに夜間のエネルギーを活用する独自の装置を作製・改良することを目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部