メルボルン大学(University of Melbourne)は5月27日、同大学の研究者らが、シンクロトロン技術と実験室ベースの分析手法を組み合わせた手法を初めて用いて、オーストラリアで伝統的に利用されてきた在来植物の浸出液(exudate)の特性と用途を調べたと発表した。
研究成果は学術誌 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS:全米科学アカデミー紀要)に掲載された。
この研究は、さまざまな分析手法を統合した独自のアプローチによって歴史的収集物に含まれる標本を分析し、浸出液の化学的特性を原子間の結合から分子構造に至るまでを明らかにした。
論文の共著者である同大学のレイチェル・ポペルカ-フィルコフ(Rachel Popelka-Filcoff)教授は文化遺産の物理化学的な分析は、考古学的資料や歴史文献に残されたその利用状況への洞察をもたらすとし、「浸出液の化学組成や材料特性はしばしばその文化的な利用方法を決定づけている」と語る。
この研究では、それぞれ固有の化学組成や構造を持ち、浸出液(樹脂やガム)が接着剤や薬として利用されてきた4つの属、
―を分析した。
シンクロトロン技術は光速に近い速度まで電子を加速することで、従来の実験室ベースの手法とは異なる分析結果を得ることができる。ポペルカ-フィルコフ博士は、「文化遺産の解析で重要なこととして、非破壊的・非侵襲的に設計できるため、分析対象を傷つけずに戻すことができる 」と説明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部