オーストラリアのシドニー工科大学(UTS)の研究者らは、海水中の細菌が、海水中の化学物質の中から好みの餌(えさ)を選んで食べるという、ほかの動物の採餌行動と同様の動きを取っていることを明らかにした。4月21日付発表。研究成果は学術誌 Nature に掲載された。
スプーン1杯の海水には100万以上の目に見えない海洋細菌が含まれており、気候や世界の海洋の状態に影響を及ぼす化学的循環において重要な役割を果たしている。
UTSとスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)、オーストラリアのクイーンズランド大学(University of Queensland)の共同研究チームは、シドニーに近い沿岸水域で 海水中の「細菌の視点」を捉える専用のマイクロ流体チップを用いた調査を行い、細菌が好みの食べ物を検出し、これに向かって移動するために洗練された行動を取っていることを示した。
論文の筆頭著者である微生物生態学者のジャン-バティスト・ライナ(Jean-Baptiste Raina)博士は、「これまで、こうした行動を示す証拠は実験室内の実験に基づいており、自然環境内の微生物集団において包括的に研究されたことはなかったが、今回、自然環境での微生物の遊泳行動が、特定の化学的な手掛かり(cue)への誘因によって支配されていることを初めて示した」 と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部